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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

日別アーカイブ:2001年8月24日

やった、ついに中途覚醒が1回まで減った。眠剤の効きを感じる。21:00の消灯後、0:30に目が覚めて1:00まで眠れなかったが、追加眠剤をもらって、その後4:00まで熟睡できた。眠りもけっこう深い。頭も比較的冴えている。いつのもように4:00に喫煙所に行くと、いつものメンツが集まっている。私が100円ショップで買ってきた肩たたきがみんなに好評で、Mちゃんが使っていた。「昨日それで足の裏たたいていたら、Kさんが『やだ~、もう使わない』って言ってたけど、Mちゃんは使ってるね」と言うと、「え~、もう使わない~」と言って放り出してしまった。

朝5時になるとポットが出る。ポットが出るとお湯が沸くまでポットの前でコーヒーを入れたカップを持ってじっと待つ。これも日課の一つだ。

昨日O嬢にマッサージをしたところ、「彼、うまいよ」といつの間にか評判になっていて、Kさんが「私もやってもらっていい?」と言うので、椅子に座った体勢でやってみる。お、彼もなかなか背中のあたりがこっている。「お客さん、こってますね~」と言いつつ、畳に移動してうつぶせに寝てもらって本格的にやってみる。非常に喜ばれた。みんなにやってあげるから、みんなにマッサージがうまくなってもらって、ぜひ自分にもやってほしい、と言うと「その頃には退院してるよ」とO嬢はのたまう。そうかもしれない。

そういえば、以前「丘で歌を歌うのやめてくれない?」と注意されたとき、「おもての通りまで聞こえるから」と言われたのだが、他の人にあとから聞いたら、単に歌声がうるさいというだけでなく、海風にあおられて、歌声でなくて変な人が唸っているように聞こえていたらしいのだ。「ますますおかしい人ばっか入ってるところだと思われちゃうからさ」うむ、確かにそうだ。「歌うんだったら、裏のグランドの方だったら迷惑にならないから」そう言われて、一度行ってみようと思っていたのだが、台風の影響で外に出られなかったし、昨日は暑くて外に出る気がしなかったので、まだ行ったことはなかった。

今朝はオカリナを吹きに行こうとして、ふと思い立ってそのグランドに行ってみた。グランドといっても土ではなく一面芝生で、丸太でできたベンチやシーソー、ちょっとした高台みたいなところもある。しかも全面的に山の影になって涼しい。高台に上ってオカリナを吹く。心地よい風が頬をなでていく。ああ、気持ちいい。ここも気に入った。丘の方が海がきれいに見えるので眺めはいいが、ここも緑に囲まれて、山好きの私としてはとても癒される。これからはここでオカリナを吹こう。

吹いているうちに、だんだん日向が射してきて、暑いので高台から降りてベンチで吹く。が、どんどん日向が寄ってくるので、少しずつ逃げるようにベンチの座る位置をずらしていく。が、とうとう完全に日向になってしまったので、あきらめて帰ってきた。8:10までが勝負だ。と言ってもこれからだんだん日が短くなってくるので、日陰で休める時間は増えていくだろう。

金曜日なので本来なら午前中は作業療法で、自転車を漕ぎたかったのだが、今日は作業棟が休みなのでできない。作業棟の職員の夏休みだそうだ。みんな午前中は暇をもてあましていて、結局いつものごとく卓球が始まる。私が見物してると「コーチ、教えてくださ~い」と言ってきたりする。相手をしたり、横で見たりしていろいろアドバイスをする。初心者でも基本から教えると、短期間でとてもうまくなる。

卓球をやってると、山岳会の仲間のEちゃんが面会に来てくれた。会のオリジナルTシャツを作ろう、と私が企画して進めている途中だったのだが、入院してしまったため、彼女が私のあとを引き継いでくれた。今日は面会がてら、そのTシャツができあがったので持ってきてくれたのだ。花も持ってきてくれたので、看護婦さんから花瓶を借りて部屋に飾ると、病室が明るい雰囲気になった。精神科独特の、廊下から窓越しに丸見えでベッドの間にカーテンもない殺風景の病室が華やかになった。

Eちゃんとは久しぶりにいろいろと話をして楽しかった。彼女は、うちの山岳会の中でも一番最初に私が自分の病気をうちあけた貴重な「友達」であり、しかもうつ病についての理解があった。「励ましてはいけない」ということもちゃんと知っていた。昼食の時間になったので、その間待ってもらい、また話を再開するが、13:00になって入浴タイムになり、われわれが一番最初の番であとがつかえていたので、彼女はそこで帰っていった。入浴後にシャツを取り替えるので、持ってきてもらったTシャツをさっそく着てみた。モンベルのウィックロンでできたTシャツである。ウィックロンは登山用の速乾性素材の一つだが、実は私はウィックロンは今まで持ってなかった。ダクロンより少し厚めかな。でも乾きはいいと聞く。今日これで卓球をやって汗をかいた後、乾き具合を試してみることにしよう。喫煙所でたばこを吸ってると、Mちゃんが「そのTシャツかわいいね」と言ってくれた。やった、受けがいいぞ。

入院が4回目だというHさんと話をしていると、さすがにいろいろと詳しい。ここの看護婦はずっとナースステーションにいて暇そうに見えると思っていたが、実は事細かに患者の様子を観察していて、それをすべて医師に報告しているらしい。たとえば「誰々が何時にカップラーメンを食べてた」とか、そんなことまで記録しているらしい。決して暇なわけではなかったのだ。精神科の患者の状態は、検査などでわかるものではない。日々の言動や表情などが、患者の状態を判断するための重要なファクターなのだ。ここのナースたちは、日々それらを観察し、医師に報告するのが一番の役目らしい。

風呂からあがった後、なんだか急に肩が凝ってきた。めちゃめちゃ凝ってきた。Hさんがマッサージしてくれたが、これがめちゃめちゃうまい。私なんかよりもずっとうまくて、思わず「うぅ~」と甲骨、いや恍惚の表情を浮かべて唸ってしまう。聞けば彼もかなりの凝り性で、やはりマッサージに通ううちに自分で覚えてしまったらしい。「なんで風呂に入って血行がよくなったのに肩が凝るんだろう」と言ったら、彼によると、凝りがひどいと普段はもう麻痺してしまっているのが、血行がよくなることによって却って表面化してしまうらしい。これからは彼と切磋琢磨して、さらにハイレベルなマッサージャーを目指すことにしよう。

荷物が届いているというので取りに行く。内容はわかっていて、会社に送付してもらっている購読雑誌だ。「私宛ての雑誌がたまっていると思うけど、暇だから送って」と連絡しておいたのだ。取りに行ってみると、けっこう重い。「日経オープンシステム」3冊、「日経コンピュータ」4冊、「日経バイト」2冊の計9冊が入っていた。そりゃ重いわ。これからは暇なときにはこれらを斜め読みしようっと。

実習生の女子大生に、何かクラブかサークルはやってるの?と聞くと、なんとジャズサークルでアルトサックスを吹いているらしい。ビッグバンドではなく、コード進行だけ決めておいてあとはインプロビゼーションで音楽を作っていく本格派のジャズだ。かっちょい~。私は数年前に、アメリカのヴォーカルアンサンブルグループが来日したときに受けた講習会でインプロビゼーションのレッスンをしたが、普段の譜面に沿った音楽とは離れて、インスピレーションで、即興で作る音楽というのもとても楽しい。その講習会では他にも、モンゴルの伝統芸能で、倍音を利用して同時に2つの音を出す「ホーミー」のやり方を教えてくれた。そのときはうまくできなかったが、練習しているうちに今では結構倍音が鳴るようになってきた。よく響くところでホーミーをやると自分でいつの間にか恍惚状態に入ってしまう。

夕方、今朝のグランドに行って今度は歌を歌う。シューベルトの「美しき水車小屋の娘」と、Tちゃんに持ってきてもらった歌集を持っていった。「美しき水車小屋の娘」は私の好きな歌曲集の一つで、単純でなじみやすいメロディーの繰り返しで、とても素直でいいな、と思っている。同じ三大歌曲集でも「冬の旅」や「白鳥の歌」はちょっとこむずかしい印象がある。ところで、この歌集は20曲から成る一連の物語になっており、ある青年が「美しき水車小屋の娘」に恋をし、その思いを歌っていくのだが、結末は結局うまくGETできないというものだ。その歌詞の中で、「彼女が緑色のリボンをつけているので、あの娘は緑色が好きに違いない。自分も緑色の服を身につけよう」という展開になっていくのだが、16番が「好きな色」という曲名で緑色のことを歌っているのに対し、転機となる17番では「嫌いな色」という曲名で緑色のことを歌っている。「好きな色」が短調で、「嫌いな色」が長調で書かれているのがおもしろいな、と思っている。

夕食後の喫煙所のおしゃべりで、看護婦のTさんが入ってきて延々と恋愛論をしていた。彼女曰く、「女は絶対に男におごらせるべきだ。女におごらない男はダメだ」と言っていたが、世の中にはそう思ってる女性がやっぱ多いのかなぁ。少なくとも私の友達の女性は「おごってくれたらラッキー」とは思ってても「おごらせて当然」とまで思っている人は少ないような気がする。あんまり熱く恋愛論を語るので、もう彼女いない歴が数年に及ぶ私は「どうしたら彼女ができますか」と聞いてみた。いろいろ話をすると「う~ん、あなたは『押しが弱い』のと『誰にでも優しいいい人』で終わっちゃうタイプだね。誰にでも優しくしちゃダメだよ」などと言う。「誰にでも優しくしちゃダメ」って言われてもなぁ。

連絡会の後、いつもは木曜日にする冷蔵庫の整理をみんなでする。昨日やるはずだったのに、看護婦も忘れていたらしい。この一週間で退院した人が残していったもの、期限切れのものはどんどん捨てていく。冷蔵庫はブラックホール化しがちで、奥にはどんな得体の知れないものが入っているかわからない、というところも多いと思うが、毎週これをやってるおかげで、冷蔵庫はいつもきれいに整頓されている。一般家庭でも毎週一回冷蔵庫の整理をすればいいんじゃないだろうか。

喫煙所のテーブルに、Oさんの差し入れで梨が切ってあったのでありがたくいただく。私が古いなぞなぞを出した。

「野菜チームと果物チームが野球の試合をしました。野菜チーム先攻で、1-0で野菜チームがリードしています。9回裏ツーアウトランナーなし、そこで果物チームのバッターがホームランを打ったら、果物チームが勝ってしまいました。なぜでしょう」

割と有名なので、みんな答えを知っているかと思ったら誰も知らなかった。答えは「ランナー梨」だったから、である。

実はこの「東北版」というのもあって、それは「果物チームが先攻で1-0でリードし、9回裏野菜チームの攻撃でツーアウトランナーなす」というものなのだが…。

この間たばこをあげた、ほとんどしゃべらない女性が病室の外から「すみません」と声をかけてきた。「お菓子ないですか?」と言う。私は間食をしないのでお菓子なんぞは一切持ってないので「持ってないんです。ごめんね」と言うと「あ、いいです」と言って行ってしまった。私の性格としては、「誰か他に持ってないか聞いてみましょうか」と言ってついて行きたいところだが、この間、看護婦に「関わらないで」と言われたので、そのまま見送る。他の人に聞いたところ、けっこう他の人にも「たばこくれませんか」とか言ってるらしい。他人にしゃべるときは物をねだるときだけ。みんなもできるだけ関わらないようにしているらしい。やはり彼女は甘やかしてはいけないタイプなのだろうか。

20:00になった。薬を飲んで就寝準備。今日はいっぱい書いてしまった。