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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

昨晩は、その前の晩と状況は似ていたが、少しいまいちだった。

寝つきはよかったが、0:30頃目が覚めて追加眠剤をもらう。しかし寝れなくて、またハンドヘルドPCを取り出してはメールチェックなんかやってしまう。やはり眠れないので2:00くらいにまたもらいに行く。その後は眠れたが、4:00に目が覚めて、それから眠れない。ぐっすり眠ってたのならいいのだが、昨日と違って熟睡感がない。昨日、時間に遅れそうになって鬱が入りかけたり、その後に躁が入りかけた影響かもしれない。

もう眠れないので喫煙所に行ってみると、すでに7人くらいの人が集まってぼんやりしている。みんなつらいんだな。中年の女性のTさんと、精神障害者に対する差別の話題から始まって、いろんな方面の話をした。「自分はどうも几帳面で完璧主義らしく、それがこの病気の引きがねになったようなんですよ」と話すと、「うん、そう見えるよ」と言われた。入院してまだ二週間なのに、すでに周りの人からはそうとわかるほど顕著なのだろうか。家庭環境の話をすると、自分は典型的なアダルトチルドレンなんじゃないか、と言われた。アダルトチルドレンの本を3冊貸してくれた。

ラジオ体操をしているときにS君と「ラジオ体操って朝一でやるにはきついよね」とか話をしていると、あとから昨日「うるさい」と注意されたYさんから「お前らラジオ体操しながらしゃべりやがって、うるさいぞ」ときつい口調で言われた。みんな休んでいるときならともかく、覚醒させようとしている運動でしゃべるのは、そんなにいけないのだろうか。うるさいと気が散ってラジオ体操に集中できないのだろうか。ま、Yさんは昨日も看護婦さんとやりあったりしたらしく、みんなも「今日のYさんは機嫌が悪い」と言ってたので、あんまり気にしないようにしよう。でもああいうきつい口調でものを言われると、私はすぐにへこんでしまう。いや、普通の人なら「へこむ」程度だが、私はそれが鬱に進行する。

いつもの丘にいってオカリナを吹こうとすると、先客がいる。多分20代前半の男性だ。どうしようか迷ったが、まあ、誰の場所というわけでもないし、海を見ながら「ロッホ・ローモンド」「O,Waly Waly」「Voice of Time」を吹く。思わず後ろから拍手が来た。さっきの若者だったが、「心が疲れちゃってたんですが、何だか癒されました」と言ってくれた。まさかそんなことを言ってくれるとは思ってなかった。本当に「癒して」あげられたのなら嬉しい。自分自身を癒すために吹いているようなものなのに。彼は、下の階の病棟らしい。うちの病棟はうつ病が多いが、向こうは節食障害とアルコール依存症が多いらしい。彼は昔アルコール依存症を治すために二回入院し、その後うつになったそうだ。このパターンは結構多いそうだ。自分の中に抱え込んでいるものを吐きだすための手段を探していて、最近は詩を書いていると言っていた。「単に逃げ道を作ってるだけなんですけどね」彼は言う。いいではないか、逃げ道を作って。詩を書くなんて、なんて素敵な逃げ道だ。アルコールやドラッグなんかに逃げるよりよっぽどましだ。それに、それは決して「逃げてる」わけではないと思う。私も入院してからずいぶん日記を書いたが、自分の思っていることをそのまま吐きだして書くことによって、そこにもう一つの自分がいることに気づいた。自分の日記は自分の鏡なんだ。書くことによって自分を客観的に見つめることができる。

昼前に主治医が来てくれた。今までになかった短いサイクルの躁鬱の状態について相談しようとアポを取っていたのだ。昨日までのできごとを話すと、「多少アップダウンはあるが、躁というほどではない」ということだ。本当の躁状態とはもっと激しいらしい。まあ私の状態については、抗鬱剤の量も増やしてみたところだし、まだまだ継続して様子を見る必要があるらしい。

ただ、自分自身、自分が「躁」かなと思っているときの行動を後から冷静に考えると、明らかにおかしい。人を無視して機関銃のようにしゃべったり、周りで寝ている人がいるかも確かめずに大声で会話したり。これも「うつ病」「うつ状態」と同じように、ちょっと気分的にハイテンションなだけなのか、本当に躁状態なのか、厳密な境界線はないのだろう。私の場合、抗鬱剤を増やして数日たつので、それがちょうど効いてきて、ちょっとハイになっただけかもしれない。ちょうどい良い精神状態に着地させると言うのは、医師も薬剤師もやろうと思っても無理だろう。まあ、なんでもすぐ気にするのが私の悪い癖なので、あまり気にしないように努めよう。

今日はAさんが退院して行った。入院日数は52日。多分会社の部長クラスの人で、喫煙所で話をしているときに、いろいろと話をさせてもらって、含蓄のあるお言葉もいただいた。退院の挨拶は実に立派なものだった。一応、状態が安定したから退院するそうだが、この病院にいてどれくらい安定した状態が継続すれば退院するのだろうか。それは自分で決めるものなのか、医師が決めるものなのか。

ところで「安定」した状態にも「安定した安定」と「不安定な安定」があるそうだ。なんのこっちゃと思うが、「安定した安定」は、たとえば下に凸の曲線の最下部にボールがあるような状態で、少しバランスが崩れてボールが横へそれても、また元の状態へすぐ戻る。それに対して「不安定な安定」は、上に凸の曲線の最上部にボールがあるような状態で、一応ぎりぎり安定はしているが、少しでもバランスが崩れると、もう元には戻らずに転がり落ちてしまう。なんとか「安定した安定」状態にもっていきたいところだ。

昼食時に私が左手で箸を持っているのに気づいたS君と、左利きの話になる。私は完全な左利きで、お箸もペンも左でもつ。ただしフォークとナイフは右利きの人と同じ用に左でフォークを持つ。これの利点は、ライスを食べるときにフォークを持ちかえる必要がないことだ。左手で文字を書いていると、よく「器用だね~」と言われるが、左利きなんだから左手で字を書くのは当たり前だ。私に言わせれば、左利きの癖に右手で字を書くやつの方がよっぽど器用だ。

世の中のものはけっこう右利き用にできているものが多く、左利きの身としてはけっこう不便を感じているのだが、右利きの人はそれに気がつかない。たとえば自動改札。私はもう右で入れる癖をつけてしまったが、左手で苦労して入れている人もいる。鋏や缶切りなんかは割と有名なので、左利き用のものがあることは結構知られているようだが、他にもいろいろ左利き専用のグッズがある。以前、左利きグッズを扱っている通販を見つけたのでカタログを見てみたが、「こんなものまであるのか」と驚く。たとえば「すりばち」。すりばちに右も左もあるのか、と思うところだが、中のすじの角度が逆らしい。右手の人は時計回りでまわすが、左利きの人は逆にまわすから、それに対応している。急須は私が常々使いにくいと思っていたが、やはりカタログにあった。持ち手に対して注ぎ口が90度左についている普通の急須だと、左手で持つとバックハンドでお茶をいれないといかん。左利きも楽しめるトランプというのもあった。普通のトランプは左上と右下にマークがついてあって、右利きの人が普通にカードを広げるとちょうどマークが見えるようになっている。で、左利き仕様トランプというのは、それが逆についている、というわけではなく、四隅についている。そりゃ、左利きだけでトランプすることは普通ないだろうから。私はその通販で、鋏、カッター、包丁、アウトドア用ナイフ、扇子を買った。扇子も普通のやつだと左手では開きにくい。「Japan Southpaw Club」というインターネットのHPがあって、メーリングリストもある。たまにオフ会をやったり、「左利きだけの野球大会」というのをやってるらしい。ルールが普通と違って、打ったら3塁方向に走るそうだ。

なんだか最近どんどん日記が長くなってきている。というか、最初は本当に「精神科への入院の記録」のつもりだったのだが、暇なのでついつい関係ない話題をつらつらと書いてしまっているうちに、日記だかエッセイだかなんなんだか自分でもよくわからなくなってきた。まあ、「読み物としておもしろいので続けてください」と言うありがたいメールもいただいているし、しばらくこの路線で続けよう。

Tさんから借りた3冊の本のうち、「アダルト・チャイルドが自分と向き合う本」を読み始めた。「アダルト・チャイルド」とは、もともとアルコール依存症の親の元で育った子供のことで、そういう子供は親を助けるため、そして家庭が崩壊しないために必死に「いい子」になり、がんばるそうだ。今ではその解釈は拡大され、アルコール依存症の親がいる家庭だけでなく、「機能不全家族」や「感情を抑圧された家族」のもとで育った人たちのことらしい。読んでいくと、確かに自分にあてはまるようなことが多い。ところが、いきなりこんなことが書いてある。

「次章から私たちACが育った家族(原家族)を見つめ、探っていく『原家族ワーク』が始まります。(中略)もっとさしせまった、深刻な問題が目の前に立ちはだかっているのなら、まずそれを考えてみましょう。とくに次のような人は、次章からのページを開くのを待ってください」とあり、いくつかの箇条書きの一つに「うつなどの治療中で、現在の状態が安定していない人」

とある。おいおい、こっから先は読んじゃいかんのか。解説によると、ここから先は自分の育った家庭環境を紐解いていく作業で、非常に大きな感情の揺れを伴うため、精神状態が安定していない人が読むのは危険なそうだ。う~ん、読むべきか読まざるべきか。とりあえずそこでストップしてある。

夜、卓球は2、3回しかやったことないというO嬢が「卓球教えて」と言ってきた。「基本はいいから、とりあえず技を教えて」おいおい、そりゃむちゃな注文だ。バックハンドでサーブしている人を見て「あれがやりた~い」そうだ。あれがかっこいいらしい。サーブするんだったらとりあえずフォアから練習するのが普通だが、まあ遊びだし、注文にこたえて指導する。サーブだけできてもラリーにならないので、その次には一応基本のフォアハンドの打ち方を教える。こっちから打ちやすい球を出し、一球打つごとに「今のはラケットが上向きすぎ」とか「今のはタイミングが悪い」などと指導する。高校時代の部活を思いだす。

20:00寝る前のお薬。パジャマに着替えて寝る準備をする。今日の日記はここまでにしよう。


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