TOPに戻る
鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

昨日スケートの話を書いていて、ふと昔のエピソードを思い出した。初めて彼女ができた時のことである。あれはちょっと面白い展開だったな、と自分でも思ったので記憶を掘り起こして書いてみた。書いててめちゃくちゃ長くなってしまった。暇な人だけ読んでくださいな。(便宜上、私のことは「Hくん」と書いています)

話は大学の1回生が終わった時の春休みから始まる。私は合唱団のサークルに入っていた。そしてそのサークルの同級生のK子を好きになった。ある日、サークルの行きつけのカレー屋で私が「スケートリンクが近くにあるから、みんなでスケート行こうよ」と提案した。するとそれを聞いた同級生のN子が食いついてきて、

「うん、うん、行こうよ。そうだ、私みんなに声をかけるよ」

と言ってきた。参加者を集めるのに、全部私に任せて、と言うのだ。普通なら言い出しっぺの私がみんなに声をかけるところなのに、なんか不自然だなと思いつつ彼女に任せた。

遊びに行く前日の夜、N子から電話がかかってきた。

「あのね、明日のことだけど、みんな行けなくなったんだって」
「え?みんな?」
「それでね、ごめん私もちょっと用事ができて行けなくなった」
「え?N子も?」
「でもK子だけは行けるみたいだから、K子に電話してあげてちょうだい」
「え?K子だけ?」

それで電話は終わった。なんなんだろう、この展開。ちょっと都合が良すぎるのではないか?とりあえずK子に電話してみた。

「なんだかよくわからないんだけど、二人だけになってしまったみたい。どうする?」
「いいやん別に。行こうよ」

私は小躍りして喜んだ。好きな子と二人で遊びに行けるのだ。そして思った。

「これは、外堀を埋められているのでは?」

「外堀を埋める」というのは当時の女性陣がおもしろがって使っていた言葉で、要は「お膳立てをする」というような意味合いである。なんとなく伝わるかと思う。

N子が、いや多分他の女の子もからんでるだろう、女性陣が外堀を埋めてくるということは、つまりこれは脈アリってこと?そういうことなの?そう言えばN子の彼氏はやはりうちらの同級生で、私がK子を好きなことも知っている。彼から情報が漏れたのだろうか。そして、実はK子も私が好きだったりして「この二人両思いやん!」となって、「こいつらくっつけてしまえ」なんて祭りになってしまっているのだろうか。

などと妄想が広がっていったのであった。

次の日、私はスケート場の前でK子を待っていた。しかし、私のリサーチ不足でスケート場には入れなかった。その日はアイスショーをやっていて一般客は入れなかったのだ。しかたがないので予定を変更し、とりあえずその辺を散歩しようよ、と言って近くにあるわりと有名な神社に行った。ぜんぜん知らなかったのだが、その神社は縁結びの神様で有名なところだったらしく、「この神社は縁結びが云々」などといろいろ書かれているのを見てどぎまぎしてしまった。好きな子といきなり縁結びの神社に行ってしまった。

その後はあまり覚えていないのだが、多分どこかで昼食を食べたのだろう。そして昼からは近くにある小高い山に登った。その山の上で、二人で延々と話をしていた。何時間話をしていただろう。2時間?3時間?話しだしたら止まらなくて、話が尽きることはなかった。めっちゃ話が合う子だな、と改めて思った。

その後、彼女を駅まで送って行ったのだが、その途中で告白した。私の告白を聞いて、彼女はものすごく驚いた顔をして、そしてその次にものすごく困った顔をして、もうあとは駅に行くだけだったのに、もう少し話がしたいと言って近くの喫茶店に入りなおした。そこでいろいろ話をした。いろいろ、と言っても実は彼女の話はあまり覚えていない。なんか脈絡がなかったし、本人も混乱しているようだった。唯一覚えているのは、彼女が同級生のA子と話したという内容だ。

前にA子と電話で話しててね、「好きな人いる?」て聞かれたから「いない」て答えたんだけど、しつこく「いるでしょ?」て聞いてくるの、いないって言ってるのに。そうしたら、「じゃあうちのサークルでひとり名前をあげるとしたら?」て聞かれたから、Hくんって答えたの。

それを聞いて私は複雑な心境だった。サークルの中では一番仲良しだと思ってはくれているようだ。それは素直に嬉しい。しかし「好きな人はいない」と言ってるのだから、少なくとも恋愛感情は持ってないということだろう。しかししかし、「いない」ということは、それはそれでライバルがいないということでチャンスである。

女性陣の意図は何だったんだろう。外堀を埋められているというのは全く自分の思い過ごしだったのか、それとも「口説いたら落ちそうなんだから、お膳立てはしておいたから後は自分で頑張れ」ということなのか、あるいはA子の話が拡大解釈されて、というか都合のいいところだけ切り取られて「K子はHくんが好きらしい」という風にみんなに伝わったのか。

最後まで彼女は困った顔をしながら、結局その日は「お返事、ちょっと待ってください」で終わった。首の皮一枚でつながったな、と思いながら、わりと自分は楽観的だった。脈絡のない彼女の話を聞いていて、迷っているのは私がどうのこうの、というよりも、自分が男の人とお付き合いをするということを自分の中で全く想定していなかったので、どうしていいかわからなくなった、という感じだったからだった。だから、あとはとにかく誠意を見せるしかないな。そうしたらうまくいくかな、なんて思っていた。

それからも彼女にアプローチしたかったが、いろいろ障壁があった。普段なら合唱団の練習で顔を合わすから、その後に夕食に誘うということもできただろうが、春休みだったので練習はない。電話してまたどこかへ誘いたいと思っても、電話がなかなかできない。彼女は自宅生だったし、当時は携帯電話などなかったから、電話をかけようと思ったら家の電話にかけなければいけない。彼女が出たらいいのだが、家族が、特に親御さんが出るかもしれない、と思ったら気後れして電話をするのがためらわれたのだ。あれはなかなかハードルが高く、つきあった後でも最後まで慣れることはできなかった。

春休み中に2つイベントがあった。1つは他の大学の合唱団との交流会だった。と言ってもその日は一日中みんなでわいわいやっていたので二人だけになることはできなかった。唯一の機会は、終わったあとだった。喫茶店での二次会が終わって、彼女は私と反対方向の駅まで歩くのだが、そこで私は「駅まで送っていくよ」と店の中で声をかけた。彼女は一瞬嬉しそうな顔をして外で待ってくれていたみたいだったのだが、私がお会計をしている間に、同級生の女の子Mから「K子、行くよ~」と声をかけられてMたちについて行ってしまった。置いてきぼりになった私はとぼとぼと帰った。Mに負けてるようでは、自分はまだまだだな、なんて思った。

余談だが、Mは今でも同期で集まったときなんかに、隙あらば私とK子を二人きりにしようとしたりする世話焼きである。この時は多分自分たちの状況はわかってただろうに(そういう情報はあっという間に回るだろうから)、そしてその日私が仕掛けるとしたらその瞬間しかないのに、それを読んでいなかったとはMらしくないな、と今では思う。

その後、サークルの合宿があった。4泊5日の合宿で距離を詰めたい、と思っていたかどうかはあまりに記憶にない。というのも、合宿というのは練習が過密スケジュールで、練習の合間にもいろいろやることがあり、しかも私は当時サブリーダーという技術系の役職についていて、自分のパート(ベース)のパート練習をつけたり、技術委員会というものに出ないといけなかったのだ。めちゃくちゃ忙しかった。

しかしチャンスはあった。合宿の途中にレクリエーションの日があった。合宿地は海のそばだったのだが、船で近くの島まで行ってみんなで遊んだのだ。その行きの船の中で、K子が甲板に出ていくのが見えたので、私も後を追いかけた。そして二人で海を見ながらお喋りしていた。あっという間に船は島に着いてしまった。二人で話せたのはその1回きりだったが、少しはアピールできたかな、と思った。

ただ、後になってから気になったことが一つあった。それはレクが終わって宿舎に戻って来たときのことだ。時間がおしていて次のパート練習まで時間がなかった。みなさん早く練習の準備をしてください、と急かされてみんなわらわらと宿舎に入っていった。私はK子のことを目で追っていたのだが、彼女は入ろうとしない。え?どうしたのかな?と思っていると、最後にその場には、私と、K子と、そしてタイムキーパーのOだけが残った。彼女は困った顔をして「Oくん、まだ時間ある?」と聞いたらOはびっくりして「少しだけなら」と答えた。すると、その宿舎は海のそばに建っていたのだが、海の方に降りる階段を彼女は降りていったのだ。私はびっくりして「K子ぉぉぉぉぉ、どこに行くねぇぇぇぇん」と心の中で叫んだ。私の事情を知っているOは「行かなくていいんか」と私に言ったのだが、もう時間ギリギリな私は動くことができなかった。サブリーダーとしてみんなに練習をつける立場の自分は、パート練習に遅れることはできなかったのだ。

どうしようと思っていたら、すぐに彼女は戻ってきた。それを見て私はダッシュでパート練習の準備に行った。あとから考えたら、あれは私が追いかけてくるのを期待して、強引に二人きりの場を作ってそこでお返事をしようと思っていたのではないだろうか。本当はみんな宿舎に入って、その場に二人だけ残ることを期待していたのに、Oがいたのでそういう行動をとったのかもしれない。その時のことについて後から彼女に聞いたことはなかった。うまくいってからは、それまでの経緯なんてどうでもよくなったからだと思う。

結局合宿ではその後なにもなく終わった。彼女から電話がかかってきて「YES」の返事を聞いたのは、合宿から帰ってきて2、3日後だったと思う。その次の日、大阪城公園で初デートをした。満開の桜がとてもきれいだったのを覚えている。

自分の青春の貴重な1コマだった。書いていて、30年近く前の話なのによく自分でもこんなに覚えているなと驚く。それだけ楽しかったんだな。どのエピソードも深く記憶に刻み込まれている。

めちゃめちゃ長くなってしまった。よく考えたらその彼女自身もこれを読んでいる可能性があるんだった。まあいいや。ひょっとしたら彼女も知らなかったことがあるかもしれない。

実はその次の彼女、というかもう今の妻まで飛んでしまうのだが、その馴れ初めもなかなかドラマチックだったので、それも今度書いてみることにしようかな。もっと長くなるかもしれない。


コメントする

メールアドレスは公開されません

*は必須項目です