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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

割とよく寝た。途中うつらうつら目が覚めたときはあるが、まあよく寝た方だろう。一回だけ時計を見たら4:30だった。そのときアイマスクがはずれていなかったので、割とお行儀よく寝ていたに違いない。しかし、2枚かぶっていた布団は1枚しかない。もう1枚は横の方に追いやられている。しかも、靴下を履いていたのにいつの間にか脱げている。いや、自分で脱いだのだろうが記憶にない。起床後に探すと、床に落ちていた。それも頭の辺りに。少し喘息気味だ。

S君が今日もおかしい。朝、ホールの窓から飛び降りようとしたそうだ。狂言か本気かわからないが、ずっとおかしい。今はナース室で保護されている。あまり調子が悪いと、特に希死念慮が出てくると、閉鎖病棟に移されてもおかしくはない。

朝食後、ドリッパーで朝のコーヒーをいれて飲んでから、散歩に行っていつものごとく音楽堂でオカリナを吹く。今日も10月中旬だというのに暑くなりそうだ。病棟に帰ってきたら少し汗ばんでいた。風邪が治りきってないせいか、単に暑いからなのかはわからない。作業療法はどうしようか。とりあえず様子を見ながら、行くだけ行ってみよう。調子がよさそうでも1セットでやめておいた方が無難だろう。

作業棟へ行ってとりあえず基礎データを計った後、体力テスト。また途中で打ち切られたが、「6段階中の2。やや劣る」が出た。1が出ると思ったが、病み上がりにしては思ったほど調子は悪くない。たばこを一本吸ってからもう一度やると、今度は「6段階中の3。普通」が出た。お、いいじゃないか。漕いでいると、先週退院したMちゃんが来た。作業療法のために月木と通うらしい。少しピアノを弾いた後、陶芸の方へ行ってしまった。「病棟に顔出すの恥ずかしいから、一緒に来て」というので、11:00に一緒に行く約束をする。

終わった後、陶芸室へ行ってMちゃんが終わるのを待つ。今度は大きな灰皿を作っていて、退院したKさんにあげるつもりだという。みんないろんなものを作っていて、作業療法士の人が作ったオカリナまであった。私が持っているオカリナも、同じように陶器でできたもので、職人の手作りだ。私も自家製のオカリナを作ってみたいものだが、正確なピッチを出せるようなものを作るのは無理だろう。

Mちゃんが11:00少し前に終わったので、一緒に病棟へ戻る。住宅展示場でもらったというHONDAのロボット「アシモ」の人形をS君へのおみやげに持ってきていたが、S君がふらふらと作業棟に現れたときにあげようとしたら、いらないと言われたらしい。代わりにUさんにあげていた。Uさんは摂食障害が回復してちゃんとご飯も食べられるようになり、今月末退院予定だという。MちゃんはK君にも会いたいと言っていたので探したが、今日から外泊で、もう出かけた後だった。ほんの少しの間病棟にいただけでMちゃんは帰っていってしまった。

これを書いているうちに、寝ているS君の主治医が来て「ちょっと話したいんだけど」とS君に言い、面談に行ってしまった。と思ったら看護婦さんと戻ってきて、荷物をまとめ始めている。閉鎖病棟に移るのだろうか。彼は今朝、窓から飛び降りようとした。そういう行動をとればそうなってもしかたないだろう。

ホールに出て喫煙所でWさんから「閉鎖病棟へ10日間移るらしいよ」と聞いた。やはりそうだったのか。それで戻ってくるのだろうか。多少非常識なところはあっても、基本的には「いいやつ」だったので、いなくなると寂しいし、卓球の相手もいなくなる。すぐによくなってくれればいいが。

入浴後、14:00に閉鎖病棟に移るのを待っているS君と喫煙所で話をした。少し落ち着いてきたようだ。「なんであんな馬鹿なことしたんだろう」と悔やんでいる。Hさんが「本当に死のうと思ったの?」と聞くと「死のうと思ったわけじゃないです」と答える。じゃあ、どういうつもりだったのか。自分でもわからないらしい。ちらほらと聞いた話では「みんなについていけない」と言ったとか、「他の部屋で話をしているのを看護婦に注意されたそうよ。それが原因かどうかわからないけど」とか聞いた。確かに彼は他の部屋へ遊びに行って、その部屋の人とよく話をしている。それが「いけないこと」だとはどこにも書いてないし、看護婦から聞いたこともない。それを注意されたからと言って、そこまで落ちるだろうか?まあ、自分の心すらよくわからないのに。他人の心はわからなくて当然だろう。S君は閉鎖病棟に行くのを怖がっている。いろいろ制限が厳しいというのはわかっているから。彼から隠し持っている携帯を預かった。閉鎖病棟に行けば持ち物検査をされるからだ。さっきは10日と聞いたが、「早くて1週間と言われた」と本人は言っていた。果たして彼は1週間で戻ってくるだろうか。

15:00からカウンセリングが入っているので、指定された場所に行く。今日は顔合わせ程度だろう。15:00ちょっと過ぎにカウンセラーが現れて「前の人が少し長引いているので10分ほど待ってください」と言う。しばらくそこで待つ。

順番がまわってきて、改めてカウンセラーと対面する。カウンセラーにしてはよく喋る方だ。自分でもそう言っている。カウンセラーは医者からは「30代の男性」としか知らされておらず、私の病気などについての情報は一切知らない。これは先入観を持たないために意図的にそうしているらしい。まず最初に「なぜカウンセリングを受けたいと思ったのか」を尋ねられたので、3年前から鬱の症状が出ていて、2回会社を長期で休んだのにもかかわらずぶり返したことを話し、今回の入院でいったんよくなっても、またぶり返す可能性があるので、そうならないために自分自身を変えていきたい、そういうことを話した。いろいろな本を読みあさったこと、会社の産業カウンセラーと2年くらいカウンセリングは続けていたが、その関係も煮詰まっていることなども話した。産業カウンセラーに「この会社の仕事が向いてないんじゃない?他の仕事を探したら?」と言われたことを話すと笑って「産業カウンセラーは割と簡単になれるからねぇ。産業カウンセラーだとそういうことも言うのかな」と言っていた。ここのカウンセラーはもっと専門で信頼できそうな感じを受けた。ACの本を読んで「原家族ワーク」をやっていると鬱が入ってきて中止したことも話した。そのワークをやるには、自分の中から出てきたことを誰かと共有しないといけないと本には説明していて、その相手にもなってほしいということを話した。今、そのワークをやるべきかどうかも迷っていることも話した。カウンセラーによると、それは「パンドラの箱を開けるようなもの」で、開けると何が出てくるかわからない。それによって一時的に調子が悪くなることはある。だけどいつかは開けなければいけない。その時期を判断するのは自分自身だという。自分で「大丈夫だ」あるいは「調子が悪くなっても何とかなる」と判断してやるものだそうだ。ただし、やるなら「入院中」がいいと言った。入院中なら、具合が悪くなっても守ってもらえる。実社会へ復帰した後ならそうはいかない。「ところで、そういうACの回復をお手伝いしたようなご経験はありますか」私がそう尋ねると「そんな人ばっかです」そういう答えが返ってきた。信頼できそうだ。

自分がいろいろ本を読んだけど、読んだだけでは何にも変わらない、何か実行に移す行動療法があれば指導してほしい、ということも言った。が、このカウンセラーの方針としては「何も指導しない」そうだ。人から与えられたことは、頭ではわかっても本当に自分で吸収することはできない。だが、自分の中から出てきたこと、つまり自分で悟ったことは身につく。それをどんどんぶつけてほしい、自分は壁打ちの「壁」になるので。そう言った。「自分の中から出てきたこと」とは何だろうと思い、この間の公園へ行ったときのコスモス畑の話をした。「満開を期待すると『これっぽっちしか咲いてない』と残念に思うけど、『一本でも咲いていればラッキー』と思っていると『こんなに咲いている』と思うのじゃないか」と思ったことだ。「そう、そういうことです」カウンセラーはうなずく。よし、これからはできるだけそういうことを自分で「見つける」ことにしよう。カウンセラーは続ける。「そういうことを自分で見つけて、さらにそれを言語化し、人に話すというのが大切なんです」それを聞いて、私が毎日日記をつけている、と言うと「それは大変いいことです」と言われた。当初の目的は全く違っていたが、日記をつけていてよかった。

今回は軽くそういう話をした程度で、最初の1、2回は私のバックグラウンドを知るためにいろいろ質問するらしい。とりあえず毎週月曜日の15:00から1時間、ということになった。

夕方、婦長さん自ら郵便物を持ってきてくれた。DMだった。購読している雑誌の送付先を病院にしてもらったはいいが、DMまで送られて来るようになってしまった。婦長さんによると、「一年に二回咲く桜」が海の見える丘の近くにあって、今咲いているという。そんな桜があるなんて知らなかった。明日にでも見に行ってみよう。「その桜ってサクラじゃないですよね」という文字で書かないとよくわからない冗談は婦長さんに通用しなかった。

夕食後、連絡会まで参考書を読む。はじめに買った参考書の方で、経済産業省が出した各種ガイドラインを読んでいなかったので、改めて読んでみた。この内容を問われる可能性は十分にあるので、よく覚えておかなくては。

連絡会の後は、久々に20:00まで喫煙所で話をした。話題は最初はS君のことで、「彼は甘えている」という点でみんなの意見というか、彼に対する見方は一致していたようだ。彼の幼稚性は多くの人が指摘しているし、今回も「調子が悪いように見えるけど、単にかまってほしいだけだろうから、わざと無視していた」という人がいた。みんながかまってくれないから窓から飛び降りるような素振りを見せたのだろうか。飛び降りると言っても、窓を開けて片足をのっけただけらしいが、そこでTさんがびっくりして看護婦さんを呼んだそうだ。でもホールにいた他の人はみんな知らんぷりしていたそうな。

話題はその後PCのことやらビデオのことやら、マニアックな方面に移っていった。同室のYさんはかなりAVマニアらしく、どこかのメーカーが新しい規格の製品を出すたびにことごとく買っていたらしい。PCは覚え始めたところで、何とかDVから画像を取り込んで編集したいと思っているそうだ。

20:00も過ぎたので、そろそろ終わりにしよう。やっと風邪も治まったようだ。これから就寝準備をしてから、その後は何をしようかなっと。


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