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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

残念ながらこの日の記録は失われている。記憶によると、この日は外泊で、他の病院に緑内障の検査(視野検査)を受けに行っているはずだ。視野検査が時間がかかってとても疲れた記憶がある。

ちなみにこの文章は2018年8月13日に書いている。17年後の追記である。

昨日から薬が変わった。新しい眠剤でぐっすり眠れるかなと期待したが、だめだった。寝つきは前よりもよくなって、22:00の巡視までには眠りに入ったようなのだが、夜中に10回くらい目が覚めた。1時間おきくらいに目が覚めていることになる。あいかわらず熟睡感はなく、朝とてもだるい。看護婦さんに「薬が変わってどうですか?」と聞かれて、状況を伝えると、そういうときでも追加眠剤をもらいに来ていいですよ。と言われた。今夜も目が覚めるようだったら早めに追加をもらいに行くことにしよう。

今日は灰皿当番だ。灰皿の吸殻をかたづけて、灰皿をきれいにする。他にテーブル当番というのもあり、そのうちまわってくるだろう。

朝食の後、少し休んでからまた昨日の場所へオカリナを吹きに行く。またEさんがベンチに座っていた。隣に座って海を見ながらオカリナを吹く。頬をなでていく風がとても気持ちいい。これも日課にしよう。

Eさんも毎日この場所へ来てるらしく、一時間くらいいろいろ話をした。彼女は躁鬱らしい。以前は有名な音響機器メーカーで働いていたが、病気のために解雇されたらしい。中小企業ならともかく、かなり大きな会社なのに、そういうことするんだ。明日はわが身かもしれない。幸い私の会社は、会社に産業カウンセラーもいるし、日本の企業の中ではかなり進んでいる方なので、これはラッキーと言えよう。「またオカリナ聴かせてね」と言ってくれた。そう言ってくれるのは演奏する側としてはとてもうれしい。

木曜の午前中は、9:30から体育館レク。体育館用のシューズが必要らしいが、そんなこと知らなかったので持ってきていない。病院へ履いてきたスニーカーの底を雑巾でぬぐって代用する。

体育館には2つ扉があり、片方には「体育館」、もう片方には「運動療法室」と書いてある。レクの内容は毎週変わるらしく、今日はドッジボールだった。ドッジボールなんて小学生以来だろうか。あ、大学生の時に合唱団の合宿のレクでやったっけ。2試合したが、2回ともうちのチームは負けてしまった。その後、時間があまったので10分ほどバドミントンをやった。ドッジボールもバドミントンもまじめにやると結構しんどい。汗をかいて気持ち悪いけど、明日までお風呂に入れないなぁと思っていたら、シャワーをあびさせてくれた。汗で濡れた下着を替えて気分爽快。そういや、午前中寝なかったのは今日がはじめてかもしれない。

明日は別の病院で眼科の検査の予約が15:00から入っている。人間ドックで緑内症の疑いがあるという結果が出たので先月検査を受けたのだが、白か黒かわからないので、追加検査をすることになっていたのだ。一日に二人しかできない検査らしく、1ヶ月待たされた。15:00から検査なので、規定の16:00にはとうてい戻って来れそうにない。しかたがないので外泊ということにして、ついでに家に帰って足りないものを取ってこようと思い、外泊届けを出したら、自分はまだ単独外出しか見とめられてない(外泊は不可)と看護婦さんに言われた。事情を説明すると、先生に相談してもらえることになった。

昼からはレク。って何をするのか聞くと、今日は園芸とのこと。と言いつつ実際は花壇やその周りと玄関前の草むしりだった。こういうのもずいぶんと久しぶりだ。雑草をむしりつつ、ふと考えた。同じ植物なのに、なぜ雑草は雑草といわれてむしられるのだろうか。自分たちは雑草なのだろうか。根っこから抜けない雑草は鎌で切り取る。今の治療・療養は根っこから抜いているのか、鎌で見える部分を切り取ってるだけなのだろうか。

夕食時に外泊OKと看護婦さんからお知らせがあった。これでこころおきなく眼科の検査に行ける。家に帰っていろいろ持ってこなくちゃ。卓球のマイラケットを持ってこよう。ラバーがだいぶ古いので、スポーツ店によって貼り替えてこようかな。それにしても夕食がしそご飯なのには参った。私はしそが食べられないのだ。運動しておなかがすいているのに、間食する習慣のない私は一切食料を持っていない。売店ももう閉まってる。
これから14時間食べるものがないのはつらい。

今まで眠れないのを我慢して23:00頃まで追加眠剤をもらわないでいたが、昨日は22:00と早めに追加をもらって飲んだら、久々の熟睡感。目が覚めてすっきりと思って時計を見たら、まだ1:00。はじめての2回目の追加眠剤をもらって飲んだが、その後は中途覚醒の嵐。30分おきくらいに目が覚めてしまう。どうなってんだ。

朝食の間に洗濯機に放り込んでおいた洗濯物を干しに行き、そのまま散歩道にある「見晴らしの丘」に行ってオカリナを吹く。吹く場所あるかな?と思いつつ持ってきたオカリナだが敷地が広大なので場所はいくらでもある。先にきていたEさんがベンチに座って海を見ていたので、隣に座ってオカリナを吹いた。後からSさんも来ていろいろリクエストにこたえた。真正面に海が見え、涼しい風が吹きぬけていく。本当に気持ちがいい。

毎週水曜日はシーツ交換。散歩から戻って、シーツ、タオルケット、布団カバー、枕カバーを自分で交換する。その後は環境整備。雑巾でベッドやそのまわりを拭き掃除する。こういうのは普通は看護婦さんやスタッフがやってくれるものだが、自分でやるのは社会復帰の訓練の一環か、それとも病院側の手抜きか。

売店に行くと、FOCUSの最終号が売っていたので記念に買ってきた。ついに廃刊になったのか。

そうこうしてる間も、決して調子はよくない。頭に少しもやがかかっている感じだ。今日から高校野球が始まって、見ようとしたが、がまんできなくなって、部屋に戻って横になってしまった。

横になってると主治医から呼ばれ、状態を聞かれた。相変わらず睡眠障害が続いていること、午前中調子が悪いこと、昨日夕方に鬱が来たことなどを話す。眠剤も抗うつ剤も種類を変えてみることになった。新しい抗うつ剤はトレドミンというやつらしい。これははじめてだ。ネットで調べてみよう。

主に喫煙所で話をするのだが、みんな割と自分のことをよく話す。こういうところだから、「あなた何の病気なんですか」と聞きにくいと思っていたが、みんな自分からしゃべってくれる。そもそも、周りの人から理解されにくく、誰にも話せなくて悩んでいるような人が多いので、こういう同じ悩みを抱えた人同士だと安心してしゃべれるのだろう。聞いてもらうことで楽になるという面もある。聞いていて、みんなやはり同じようなことで悩んでいる、同じような問題を抱えていることがわかる。きっかけはさまざまではあるが。

お風呂に入った後、畳のところで爪を切る。隣できのう倒れこんだTさんが爪を切っていて、ちょっとお話した。リストカットの跡が何本もあって本当に痛々しい。リスカをやるので爪切りもシャーペンも取り上げられていて、使うときだけ返してもらうらしい。爪切りも監視つきなんだ。彼女はODをやって胃洗浄を受けたこともあるらしい。

喫煙所で話をしているときに聞いたところ、トレドミンというのはSNRIらしい。SSRIの次はSNRIか。どんどん薬を渡り歩いてるなぁ。

夕食後、また少し鬱が入って横になっていた。昨日といい、なんでこんな時間に来るのだろう。幸い少し寝ているだけで回復してきた。

連絡会で、食堂で私の隣の席のTHさんと、名前を覚えて知り合いになったばかりのS美さんが退院されると知らせがあった。退院はおめでたいが、友達になった人が去っていくのは寂しい。S美さんはTさんと抱きあって別れを偲んでいた。

昨晩ははじめて追加眠剤をもらわなかった。と言ってもぐっすり眠れたわけではなく、ほぼ一時間おきに目が覚める中途覚醒の連続。熟睡感はなく、朝とてもだるい。コーヒーを飲んでストレッチを入念にやると目が覚めたが、朝食後、まただるくなってきた。そしてまた寝てしまう。10:30に起きてコーヒーを飲んでもまだだるい。

隣のベッドのKさんが喘息の発作で点滴を受けている。数年来の大きな発作らしい。私も軽い喘息はあるが、重い人はつらいんだろうな。下手すると呼吸困難に陥るから。

A君は見るからにサーファーと言った若者。どこが悪いんだろうと思ったら彼も鬱らしい。シンナーをやっていた後遺症だそうだ。外に出たらシンナーをやってしまうので、やめようと思って家から出ないでいるうちにひきこもり状態になってしまったとか。いろいろなパターンがあるものだ。

買い物に行きたかったので昨日外出届を出していたが、午後になっても調子がよくならないので中止する。昨日やっと手元に届いた診断書を会社宛てに送って、また横になる。

夕方から夜にかけて、かなり調子が悪くなっていった。普通うつ病の日内変動は、朝から午前中が調子悪く、午後から夜にかけて調子があがっていくもので、入院してからもずっとそのパターンだったのに、今日は珍しく夕方に来た。久々にちょっと大きな鬱に襲われた。この嫌な感覚。自分が自分でないような、自分の存在に違和感を感じ、自分の意思で体が動かない、いや自分の心に自分の意思が入らないというのか、とにかくこの嫌な感覚は経験してみないとわからないだろう。こうなったら、この状態を脱するまでじっと我慢して待つしかない。もっとも、私は希死念慮がないだけまだましなのだろう。

何とか夕食を食べ、しばらく横になっていたらだんだんましになってきた。Sさんが卓球しようと誘ってきて、どうしようか迷ったが、「自分のやりたいことはやった方がいい」という医師の言葉を思い出して、やってみたら、気分がよくなってきた。

自分の部屋へ戻ろうとしていたTさんが突如うずくまって動かなくなった。「大丈夫ですか?」しゃがみこんで尋ねた私の腕をつかんで震えていた。彼女の病気はなんなんだろう。Sさんが看護婦を呼んできた。看護婦さんに寄りかかるようにして彼女は部屋へ戻っていった。

昨日は寝つきはよかったものの、中途覚醒がひどかった。まず11:00に目が覚め、その後もう一度目が覚めた後、次は2:00。そこで追加眠剤をもらって飲んだ。たばこを吸おうとすると、喫煙所にSさんとTさんがいた。Tさんはとても華奢な若い女性だが、かなり参っているようで、リストカットの跡がなまなましい。

その後は寝たり起きたり。でも睡眠時間自体はだいぶとれてるので、朝のけだるさはなく、畳でみっちりストレッチをやると気持ちよかった。これから日課にしよう。

調子いいかなと思ったら、やはり朝食後寝てしまった。

10:20頃起きてコーヒーを飲む。

11:00から頭部CT検査。よくテレビなんかで見るように、スライド式のベッドに寝かされ、少しずつベッドが動いてはぐわ~んという音がする。頭の輪切りの画像を何層もとっているのだろう。

昼過ぎに院長先生と面会。面会と言っても1分くらい話しただけで、顔あわせのような感じだ。「主治医とよく相談してゆっくり治してください」とのこと。当たり前のことしか言わないんだな。

その後は3日ぶりのお風呂。毎日入りたいけど、そうはいかんだろう。しかし、看護婦さんは大変そう。なんせ、介助が必要なお年よりも多い。それにしても、若い看護婦さんが脱衣所でずっと見張っていて一人一人を監視しているのには参った。事故が起きたりしないように、ということなのかもしれないが、おばさんなら気にならないのだが…。

Hさんが急遽退院するそうだ。任意入院なので、自分の意思でいつ退院してもいいはずではあるが、もう少しかかりそうだと言ってたのに。Hさんの隣のベッドの人が、夜中にHさんがごそごそするのでこっちまで目が覚めてしまう、部屋をかえてほしい、とこぼしていたのだが、それを看護婦に言って、それで注意されたからなのだろうか。

ここの病院はいかにも「療養所」という感じだが、昔は結核の療養所だったらしい。今は目の前に道路が通っているが、昔はそれはなくて、ここから逃げるには海を渡るか山を越えるかしないといけなかったらしい。

普通の病院では、大きな建物の1階から数階までが外来で、それから上が入院病棟となっていることが多いが、ここは外来の建物と、入院患者の病棟が完全にわかれている。病棟もたくさんあり、患者の病気の重さによってわけているようだ。ここは精神科でも一番軽い人が入る開放病棟だが、閉鎖病棟はもっと監視が厳しいのだろう。外来病棟からここまで歩くとたっぷり5分はかかる。途中の廊下はとても気味悪い。いまどきこういう建物は珍しいので、よく映画なんかの撮影に使われるらしい。

夜は飯食って卓球して連絡会してテレビ見て、お決まりのパターンになってきた。今日入院してきた女性は壁に向かって手をあわせて何やらとなえているらしい。いろんな人がいるもんだ。

いろいろと足りないものがあるけど持ってきてくれる人がいないので買い物に行きたいのだが、外出許可はまだ出てない。だめもとで外出届を出してみたら、医師に確認してみるとのこと。明日は外に出られたら買い物のついでに羽を伸ばしたいなあ。