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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

カテゴリー:その他諸々

「ソロモンの犬」読了。面白かった。ミステリーの展開が気になりつつも、この恋の行方はどうなるのかとそっちも気になりつつ、途中「え~!そんな~まじ~?」という展開があって、ちょっとがっかりしながら読み進めていたのだが、実は小説のトリックで、あとから「騙された~」と思ったのだった。これはミステリーではよくある手法なのか、そう言えばちょっと前に読んだ小説でもあったぞ。あの時も「騙された~」と思ったのであった。最後の終わり方は、あああこうやってじらしたところで終わるのね、というパターン。本当はその続きが知りたいのだが、そこは読者の想像におまかせしますということなんだろうけど。

これだけでは何を書いてるのかさっぱりわからんな。でも具体的に書くとネタバレになってしまうのでこれくらいにしておこう。

ところでミステリーを読んでいると、人が死ぬのだ。ミステリーだから当たり前なのだが、それが自分の思い入れが強い、自分が感情移入している人物だと、なんだかもの凄くショックである。まるで自分が殺されたような気がする。以前はそんなことなかったんだけどなあ。人の死に対して敏感になってるのだろうか。

「宮辻薬東宮」読了。先の日記に「ホラーというのは宮部みゆきから渡されたバトン」と書いたが、最初から各作家にテーマとして与えられていたらしい。4話目まではぞくっとさせられたが、5話目だけはよくわからなかった。

その5話目はプログラミングの話で、MSXとかBASICとか機械語とかスプライトとかZ80とか、懐かしい言葉が並んでて楽しかった。私も小学生から中学生にかけて、これらに関する技術を習得してプログラミングにのめり込んでいき、大学では情報工学科に進んだ。そして就職してもソフトウェア開発の道に進んだのであった。

話の中でソフト開発における「2割8割の法則」というのが出てきた。技術者のうち2割の人が成果の大部分をあげ、残りを8割の人が補っているというもので、ではその8割をリストラして2割の人員だけを残したらどうなるかというと、残ったメンバーの中で2割と8割に分かれるという話だ。

これはもっと一般化して「働きアリの法則」と呼ばれている。概要をWikipediaからそのまま引用すると、

  • 働きアリのうち、よく働く2割のアリが8割の食料を集めてくる。
  • 働きアリのうち、本当に働いているのは全体の8割で、残りの2割のアリはサボっている。
  • よく働いているアリと、普通に働いている(時々サボっている)アリと、ずっとサボっているアリの割合は、2:6:2になる。
  • よく働いているアリ2割を間引くと、残りの8割の中の2割がよく働くアリになり、全体としてはまた2:6:2の分担になる。
  • よく働いているアリだけを集めても、一部がサボりはじめ、やはり2:6:2に分かれる。
  • サボっているアリだけを集めると、一部が働きだし、やはり2:6:2に分かれる。

ということである。2:6:2に別れた3つの群れをそれぞれ1軍、2軍、3軍とすると、自分の人生は1軍から2軍、そして3軍へ落ちていったなあと感じるのだ。サボっているわけではなくとも、アウトプットの量が少ない、という意味でそうなっていった。

一応難関大と言われる大学に入るまでは1軍だったと思う。大学の中はそれまで1軍だった人の集まりだった。そして入ってから特に成績が優秀なわけでもなかった私は2軍になった。しかしいつの間にかサボりぐせがついて3軍に落ち、留年してしまった。浪人した時はそんなにショックではなかったが(クラスの半分以上は浪人してたし、そんなもんだと思っていた)、留年した時は絶望感満載だった。

就職してからは巻き返した。即戦力としてソフトウェア開発の腕を買われ、アウトプットを出していた最初は1軍だったと思う。しかしそれから行き詰まってしまい、技術者としては凡庸な2軍に落ちた。2軍のままならまだ良かった。しかし、そこからメンタルをやられ、自分の生産性は極端に落ちてしまい、もうそこからはずっと3軍の人生のような気がする。頑張っても報われない。頑張っても裏目に出る。なんかそういう街道を歩いているような気がする。

だからどうしたと言うわけではないが、自分の人生はこのまま続いていくのかな、と寂しく思う。1軍は無理だとしても、何かの2軍くらいには上がれないものか。4軍がないことを祈る。

伊坂幸太郎「ラッシュライフ」読了。いくつもの人生模様が描かれ、それがだんだん絡まり合って行く。あの場面がここに繋がるんだな、というのがわかった時はなんかすっきりする。自分が新たな発見をしたかのような爽快感がある。最後はその爽快感のラッシュである。あれもこれも伏線だったとは、てな感じだ。ぜんぜんジャンルは違うが、映画「有頂天ホテル」を思い出した。あれも三谷幸喜がタイムスケジュールを綿密に計算して、いろんな人の物語が絡み合うストーリーだった。

なんて思っていたら、あることに気がついた。ひょっとしてこの小説には大きな仕掛けがしてあるのではないか?ある矛盾がありそうだ。それをほのめかすヒントも出てきている。それを確認するためには最初から作品を読み返して、詳細にメモを取っていかないといけないがどうしよう。

と思ってネットで検索したら、私と同じようなことに気がついて実際に検証した人がいた。そうすると、「そういう仕掛けをしているように見せかけて、実はそんな矛盾はなかった。作者の罠にはまりかけた」ということを詳細な解説を交えて書いていた。う~ん、やられた。

ネタバレになるから詳しくは書けないので、この記事は読んでてさっぱりわからないことだろう。

「ラッシュライフ」にちなんだ曲がないかなあと探してみたら、まさにそのままの曲が出てきた。クラムボン「Lush Life!」。たまたま見つけたにしてはいい曲だった。この小説で出てくるのはジャズの同名の曲だが。

昨日は夜に筒井康隆の「夢の検閲官・魚籃観音記」を読んでしまったが、あまりにも荒唐無稽で読んでてもさっぱりわからない話をついに飛ばしてしまった。なんつーか、前衛的というか単に思いつきででたらめを書いているのか、これが文学なのかどうかさっぱりわからん。私はドタバタハチャメチャな筒井康隆ワールドは好きなのだが、さすがについて行けなくなった。250ページくらいの文庫本で10話あるので一つ一つが短いのだが、そんなに短い小説でも最後まで読みきれない。これはこれで評価されてるのかなあ。

飛ばした話の次の話が「シナリオ・時をかける少女」だったので、おおこれは「時をかける少女」の映画版のシナリオなのか、と思って読んでいたがなんか違う。あの伝説的なジュブナイル小説を、こんなに暴力的かつエロくしていいのか?原田知世が怒るよ。なんかめちゃくちゃである。登場人物が途中で「これ、ちょっとやり過ぎじゃないの?この映画の品位が下がるんじゃないか?」なんて話している。しかもこれ、昭和58年というまさに映画版が上映されているときに書かれた小説である。いくら原作者とは言え、やりたい放題だなあ。

その次の観音様と孫悟空がセックスするという無茶苦茶な官能小説も、圧倒的なボキャブラリーや造語能力(?)、もの凄い描写力には感心するが、読んでて呆れてくる。これが活字になって小説雑誌に載っていたというのが驚き。でも面白くないかと言われれば、面白いと答えるしかないのだが。最後の陪審員の話はちょうどいいドタバタで面白かった。

今日は夜にずっと「重力ピエロ」を読んで、22時頃に読み終わった。勧善懲悪とはなんぞや?と思ってしまった。善か悪かを判断するのは社会か、家族か、あるいは神か。神に「どうすればいいのか?」と問うた時に「自分で考えろ」と答えが帰ってきたという記述がなんだかおかしかった。ここ1ヶ月半くらいミステリーを中心に本を読んでいるが、レイプが当たり前のようにたくさん出てくる。殺人の次に、いや殺人よりも犯罪としては重いテーマなのかもしれない。

驚いたことに「未来を預言するかかしがいる島に行った男」が出てきた。おお、この本の前に「オーデュボンの祈り」を読んだところだ。その登場人物がひょいと顔を出すというのは、これはこの作家の本を読んでないと味わえない爽快さだな。「分かる人は分かる」。にやりとさせられるところだ。連作の短編小説でもあったが、伊坂幸太郎はこういうことをよくやるらしい。