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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

日別アーカイブ:2001年9月11日

昨日もよく眠れた。20:00に眠剤を飲んだ後は、日記の推敲をしてすぐに就寝し、3:00頃までは眠っていた。その後は何回も目が覚めたので、5時前くらいにホールへ出ていくと、もうかなりの人数が喫煙所で喋っている。昨日入ってきたおばさん、すごい大声でしゃべっている。いや、大声じゃなくて普通の声なのだが、まだ夜なのでみんなひそひそ喋っているのに、自分一人普通の声で喋っている。たまりかねて看護婦が注意に来た。

OさんやTさんが、看護士のNさんからショックなことを言われた経験を話す。だから二人はNさんに好印象を持ってない。私はNさんはいい人だと思っていたので、話を聞いて「そんなこと言う人だったのか」という反面、Nさんが自分に重なって見える。本人は悪気はないのだろう。むしろ、冗談で言ったことが、自分の思惑とは違って相手を傷つけてしまっていた、そういうことは誰にでもあるだろう。本当の善人とか本当の悪人なんて存在しない。Oさんにそう言うと、でも彼女は彼のその一言で彼を嫌いになってしまったらしい。もっと寛大な心を持てればいいのだが、心の病気で入院している彼女にその余裕はない。

いったん部屋へ戻ってもう少し休み、再びホールへ出ていて目覚めのコーヒーをいれて飲む。Tさんが泣いている。「せっかく仲良くなったのに、お別れなんて」どうやら、昨日入ったおばさんと同室で仲良くなれたのに、そのおばさんはもう別の病棟に移るのか、と思いきや、やはり同室のおばあさんのいびきがうるさいため、別の部屋に移るだけらしい。それだけでわんわん泣くなんて、やっぱり繊細な人なんだ。

台風が来ている。今も外は雨風が強く、これから暴風雨圏内に入ってきそうだ。今日1日がヤマだろう。外出予定の木曜日の天気が気になる。この台風はもう行ってしまっているのでそれは大丈夫だろうが、次の台風が来ているという。ただの雨だったらいいけど、台風はやだなあ。プロトレックで現在の気圧を見ると983ヘクトパスカル。やはりかなり低い。プロトレックは気圧の推移をグラフ表示してくれるが、昨夜から今朝にかけて急下降している。

はじめて「意見箱」に投書してみた。ここには、病院や医師、看護婦に対する意見や苦情などを入れる意見箱が設置してあるのだ。もちろん匿名である。私が書いた内容は、ここの看護婦は、環境を改善しようと思って患者が提案することをに耳を貸してくれない、というものである。例として、私が他人の洗濯物を濡らしてしまったときに「洗濯機が空であることを確認してからコインを入れてください」という貼り紙をしてはどうか、という提案をしたのに無視されたこと、それから、薬を待つ行列がいつも長いが、それは看護婦が患者に薬を渡すときに、その患者の薬を探し出すのに時間がかかってるからで、はじめから五十音順に並べておけばいいのに、という二つをあげた。さあ、何か反応があるか、変化があるか楽しみだ。意見箱は毎週一回、婦長がチェックするそうだ。それにしても雨風の音が激しい。本格的に台風が襲ってきた。

作業棟にチャリ漕ぎに行く準備をして、その前に一服しようと思って喫煙所に出てきた。と、いきなり電気もテレビも消えた。停電だ。あらら~、こりゃだめだ。作業棟のエアロバイクも電源が入らないと使えないな~。いくつかの電灯はついていて、その直後にナースステーションの電気はついた。これらは非常電源で通電するようになっているようだ。と思っていたら、5分くらいしてから停電は復旧して電気がついた。よかった、これでチャリ漕ぎもできる、と思いきや「玄関の前や廊下がかなり水浸しになっていて危ないので、みなさん病棟から出ないでください」とのお達し。「作業棟へ行くのも無理ですか?」と尋ねると「作業棟へも行かないでください」だとさ。「本日の外出・外泊もすべて中止します」との放送が入った。まあ、こういう日もあるさ。おてんとさまには逆らえない。「急に暇になっちゃったなあ。本でも読むか。晴耕雨読だよね」と言うと、「お、プラス思考ですね」と言われた。うん、プラス思考に考えられる癖がだんだんついてきている。いい傾向だ。

その後、「ただ今の停電は、地域の故障により電力会社で切った停電で、また停電があるかもしれないのでご了承ください」との館内放送が入った。続けて「外来診療も中止します」との放送。通院患者もこの台風じゃ大変だろうに。でも、やっとの思いで来たのに「休診です」と言われた人は、さぞかしかわいそうに。

自分のベッドで本でも読もうと「こころの処方箋」を広げるが、隣のベッドでHさんと、別室のEさんがぺちゃくちゃ話をしていて集中できない。耳栓をするが、こんなに隣でしゃべられていては効き目がない。すぐ隣のベッドで本を読んでいる人がいる、ということに気がついてないのかな。まあ、私も以前に同じようなことをやってしまったので、ここはひとまず退散し、耳栓をつけたままホールに行く。

ホールの自分の席に座って本を読むが、やはりホールもいろんな人がしゃべったりしてるので、集中できない。と思ったらまた停電だ。やはり電力会社が切ったのか。暗いので、もう読書どころではないなあと思ったら、風呂場の入り口の所の非常灯がついている。しかも南側に窓があり、かなり明るい。そこへ行ってしばらく本を読む。うん、なかなか快適だ。お先真っ暗と思っていても、探せば灯りはあるもんだ。

本を読んでいると、なんだかホールがあわただしい。この病棟は古いので、海側の部屋やホールの窓を閉めていても、たてつけが悪く、すきまから雨が吹き込んできているのだ。みんな大慌てで、看護婦や患者、看護実習生も総出で、窓の隙間にタオルや新聞紙をつめたりする。バケツを持ってきて、タオルをつたって浸みてきた水が溜まるようにする。こういう非常時に人を観察しているとおもしろい。やたらうろうろしているけど、実は何もしていない人。「昼御飯ちゃんと来るのかなあ」とただ食事の心配をしている人。ああしろこうしろとうるさいが自分は何もしない人(こういう人も必要だと思うが)。そして作業を手伝いながらそれとなくマンウォッチングをしてる人。自分のことだが。

今度の停電は長い。どうしたのであろうか。機械の故障を修理しているのだろうか。もう1時間半くらい続いている。今回も電力会社が切ったのだと思うが、いつになると復旧するのだろう。私はホールの浸水対策が一段落してから、また風呂場の入り口の場所でしばらく本を読んでいたが、みんなが喫煙所に集まってラジオで台風情報を聞いているようなので、そこに行ってみた。だが、電池が弱いのかラジオの出力が弱いのか、よく聞き取れない。そこで私が自分のラジオを持って来てスイッチを入れると、結構大きな音が出たのでしばらくそれを聞くが、台風によって影響の出ている交通機関の情報は放送しているのに、なかなか台風自体の情報が流れない。と思ったら通常のニュースに移ってしまったので、ラジオは切ってしまった。

昼食はちゃんと運ばれてきた。よかったよかった。ここは1階ではないので、厨房から病棟までは何とか運べても、その後はエレベータで運ぶ。その食事運搬用のエレベータは非常電源では動かなかったらしいが、どうやって運んだのかな。人力かな。何にせよ、「食事」は重要なので、そこも非常電源で動けばいいのにねえ、何とかならないのかしら。私でなく、婦長の言葉である。別に急にオカマになったわけではない。

14:00頃、ホールに行ってみる。まだ停電は続いている。ちょうど病院の自警団(?)ぽい人が何人か来て、婦長さんと一緒に雨漏りのする窓などをチェックしていた。ついでなので「いつまで停電が続くのか、病院側から電力会社に問い合わせたりしたのでしょうか」と聞いてみたら「この停電は電力会社が切ったものではなく、病院側が非常電源にすべて切り替え、病棟を一つずつチェックしながら通常電源に切り替えている」ということらしい。うちの病棟は端っこだから復旧が遅かったのかな。「もう復旧作業に入りますから」それを聞いて安心した。人間、なにか辛いこととかしんどいことがあっても、それが「いつまで続く」ということがわかっていれば、案外不安は感じないものだが、「いつまで続くかわからない」場合は極端に不安が増す。軍隊の行進も、「いつまで歩くか知らされていないとものすごく疲れるが、あと1時間などとわかると元気が出てくる」そうだ。山登りなんかは、自分で地図を見ながら現在地を確認しながら登っているので、そういう不安は一切感じない。

戒厳令が解除された。と言うと大袈裟だが、病棟から外に出てもいいというお達しが出た。ただ、まだ外は雨が降っているし、売店も営業してないという。「自販機くらいは使えると思いますよ」そう言う看護婦さんの言葉を信じて自販機へ行くと、「停電なので使えませ~ん」という売店のおばちゃんのお言葉。「全館停電なの。病棟で説明されなかった?」おいおい、説明されてないぞ。私が個人的に聞いてやっと知ったくらいだ。それに、どうもさっきは説明を聞き間違えたようで、まだ病院内はどこも復旧してないようだ。全部のチェックが終わってから復旧されるらしい。やれやれ。まだ雨は降っている。夕方にはあがるだろう。その頃には停電も復旧しているだろうから、自販機で飲み物を買って、どこかでオカリナでも吹こう。ちなみにさっきの「自警団」のような人達は、病院の管理職らしい。それで婦長が「この有様を見てください」と強調してたのか。

15:00にシャワーを浴びようとしたとき、全館放送が入った。「停電の復旧は16:00頃になる見込みです」まだそんなにかかるのか。お湯も出ないかもと思ったら、案の定…あらら出た出た。はて、やっぱガスで沸かしてるのかな。だが、シャワーの水圧が異常に低く、ちょろちょろとしか出ない。ここは非常電源で動いていて、その電圧が低いのかな。

入浴後の私の楽しみの一つが最近増えた。それは「綿棒」である。そう、あの、うどんを作るときにころころ転がす…、そりゃ「麺棒」やっちゅうねん。いやいや、一人ボケつっこみはおいといて、元々耳掻きの好きな私、普段もしょっちゅう愛用している金属製の耳掻きを突っ込んでは耳血を出していたりするが、お風呂上がりは特にこの「綿棒」が気持ちいい。右の耳に突っ込んでそのままぐりぐりやってると、あまりの気持ちよさにそのまま左の耳から出てきそうになる。耳の話で思い出したが、よく女性が「男の人に話しかけても、片方の耳から入って片方の耳へ抜けてしまう」という言い回しをすることがある。これはけっこう知られているが、それに対する男性の反論というのはあまり知られていないようだ。「女の人に話しかけると、両方の耳から入って口に抜けてしまう」というものなのだが。

16:00過ぎ、そろそろ復旧する頃だと思っているところに、また全館放送。「停電の復旧は16:40頃になる見込みです」おいおい、また延びるのか。まあここは文句を言わずに、復旧する方も全力でやっているのだろうから、見えないところで頑張っている人達に「頑張って」とエールを送ることにしよう。ただ、病棟から外に出られるのが17:00までなので、それまでに自販機に行って飲料を買いたいなあ、そう言うとKさんが「売店は営業再開してるよ。でも、レジが使えないから手書きでやってて、店内には2人までしか入れないらしいけど」お、それはいいこと聞いた。さっそく売店に行くと、もう閉まりかけていた。「まだやってますか?」と聞くと「暗くて周りが見えないから、もう閉めるところだよ」「ジュース一本だけ買いたいんですけど」「ああいいよ」てなわけで滑り込みセーフでゲットできた。

夕方、雨があがったのでグランドへ言って、久々に歌を歌った。Tちゃんに借りたカシューナッツ、ではなくて歌集を持ち出すのは、Mちゃんの転院騒動の際に「今日の日はさようなら」を歌ったとき以来だ。グランドで一人で歌っていると、一人の若者が近くに寄ってきて、歌い終わると「お上手ですね」と誉めてくれた。「ええ、一応合唱団に入ってるので」と言ってから、続けて「今日はすごかったですねえ」「ええ、一日停電していましたねえ」というような会話の後、「どちらの病棟ですか」と聞いたところ「あ、私は作業療法士の実習に来てるんですよ」とのこと。この病院にはよく実習生がくるもんだ。でも、今日はどの病棟も外出禁止だったので、作業棟には誰も行っていないはず。「今日は実習にならなかったでしょう」と聞くと、「ええ、一日中暇でした」そりゃそうだろう。聞けばちょっと離れた県の大学から2ヶ月間の実習に来ていて、今は病院内の施設に寝泊まりしているらしい。そこから朝の8:30頃に作業棟へ来るだけで、びしょびしょになってしまったとか。まあ、そりゃそうだわな。そういうときこそゴアテックスのレインウェアが役に立つのだが、そんなもの普通の人は持ってないか。

「こころの処方箋」を読み終えた。うん、とてもおもしろかった。谷川俊太郎の解説もよかった。これは「こころの病」を持っている人でなくても、誰にでも薦めたい良書だ。自分にとって「これはためになる」という箇所には赤線を引いて、赤線を引いた章は目次に丸をつけておいた。読み返したい本の一つになったが、全部を読み返す暇がなくても、この部分だけは読み返そう。ところで読んでいる途中で気がついたが、以前書いた、宗教関係の本を薦めてくれた(送ってきたのはその家族が勝手に、であるが)知り合いの医者が、もう一冊お薦めしたい本がある、と書いていたその本があったのだが、それがまさにこの本だった。まったくの偶然で、私は外出したときに立ち寄った本屋でたまたま見つけたので買っておいたのだが、その医者には「お薦めいただいた本、買って読んでみました。とてもいい本をご紹介いただき、ありがとうございました」と返事を出しておこう。

それにしても、入院生活は暇かと思っていたら、とても忙しい。まだまだ読みたい本が山積みになっている。アダルト・チルドレン関係の本や会社から送られてきたコンピュータ関係の雑誌が多数。コンピュータ関係の雑誌は「読まなければ」という義務感でなくて、自分が好きで読んでるものなので、暇があったら読みたいのだが、今まではなかなか暇がないか、あっても調子が悪くて寝ていた。今日は調子がよくて暇だったので、日経コンピュータの記事にも目を通せたし、「こころの処方箋」も読み終えることができた。そうそう、例の宗教関係の本も、一通りは目を通してみようかな。まだ半分くらいで止まっている。それはそうと、10月に情報処理技術者試験があるので、その勉強をしようと思っていたのに、それも全く進んでいない。これからはそれを優先させよう。もちろん、自分の心の問題を解決させ、自分を変えるための活動や読書などの方が優先だが、それだけをやらなければいけない、ということもないだろう。この業界は進歩が激しい。勉強は私がスムーズに社会復帰、というより今の職場に復帰するためには欠かせない。これを利用して、普通に働いている人よりもたくさん勉強して試験に受かってやる。見てろよ~、だてに休んでるわけじゃぁないんだ。

夜はまた卓球。最近また夜の卓球ができるようになって嬉しい。みんなもレベルがあがってきて、白熱した試合が繰り広げられる。最後には看護士のIさんまで混じってた。おかげで、「これくらいにしておこう」と思っていったん汗を拭いてシャツを取り替えたのに、せっかくIさんが出てきたので一戦交えて、また汗をかいてしまった。もう遅いから、シャツは取り替えずに、体が冷めたらパジャマに着替えよう。

20:00になって就寝前の服薬。アトピーの薬も忘れずに飲む。実は、つい昨日までずっと飲むのを忘れていたのだ。普段は自分で意識して飲んでいて、アトピーの薬を飲み忘れるなんてことはなかったのに、ここに入って「薬の時間ですよ~」と言われてから薬を手渡されて飲むようになって、「自分で薬を飲まないといけない」という意識が薄くなってしまったような気がする。これも広義では一つの「マインド・コントロール」に入るのではないだろうか。な~んちって、そんなたいそうなものではないか。でも、「他人が決めたスケジュールにしたがって行動」していくと、主体性がなくなっていくのは確かのようだ。他のことに関しても、そうならないように、常に主体性を持って行動しなくては。とか考えつつ、そろそろ体も冷めてきたのでパジャマに着替えるかな。それにしても、今日は読書もできたし好きな雑誌も読めたし歌も歌えたし卓球で汗も流せたし、とてもバランスの取れた充実した一日だった。台風さまさまかもしれない。