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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

日別アーカイブ:2001年9月4日

今日はよく眠れたと思う。20:50に就寝し、0:30、2:30と中途覚醒はあったものの、追加眠剤は飲まずに、3:50起床。目覚めはよく、頭もすっきりしている。ホールの喫煙所に出てくると、もう数人が集まっている。いつものメンツだ。

そこにTさんが泣きながらやってきた。どうしても眠れないので、枕元の電気をつけて少年院にいる息子さんに手紙を書いていたら、看護婦さんに怒られたというのである。それも4回も5回も。注意する、じゃなくて「怒る」のである。今日の夜勤は新米のIさんだ。電気をつけたら、他の患者さんに迷惑でしょ、ということである。でも、4人部屋で今は3人しかいないTさんの部屋、他の2人はがーがーいびきをかいて寝ているそうである。普通はまず「どうしたの?」「眠れないの?」とか、まずそう聞いて、注意するならするで、もう少し優しい言葉をかけてあげられないのか。なんでここの看護婦は頭ごなしに怒るんだろう。

Tさんは本当はとても繊細な人だ。ここの看護婦はそれを理解していない人がほとんどではないか。Tさんが貧血で倒れて、看護士が彼女を運ぶ途中、彼女の意識がないと思ったらしく、こう言ったそうである。「また問題児がきた」彼女はちゃんと聞こえていた。本人の前でこんなこと言うなんて問題外だ。

I看護婦が喫煙所にやってきた。また何か言うのかと思ったら「今日は寒いから、みんな風邪ひかないでね。長袖とかあったら着てちょうだい」意外に優しい言葉だ。Tさんは言う。「私にもなんでそういう優しい言葉をかけてくれないの」I看護婦は言い返す。「最初は優しく言いましたよ。でも、何回も繰り返すから」「電気をつけたのは私が悪い。それは全面的に認めます。でも、眠れないつらさがあなたにわかりますか?そういうときはとても心が弱っているのに、あんなにきつく言われたら、よけいつらくなるじゃない」彼女は昼間は気を張って突っ張っているが、感情の起伏は激しい。「躁鬱混乱状態」それが彼女の病名だそうだ。看護婦はその感情の起伏をちゃんと読みとって、今怒ったりしたらかえって心の病を悪化させるかもしれない、そう考えたりしないのか。眠れないときのつらさを味わったことがないのか。

看護婦が去った後、日頃からみんなが思っている看護婦への愚痴をたれる。と、Tさんがいきなり咳き込み、嘔吐しかけた。みんな急いでバケツを持ってきたり、私は横に座ってずっと背中をさすっていた。心と体はつながっている。心の不調は体に現れる。我々のような精神的な病を抱えた者は特にそれが顕著だ。「子供に会いたい」彼女は寂しそうに言う。彼女はまだ外出許可も出ていない。彼女の心は激しく揺れている。彼女の心は雨模様だ。外も雨が降っている。さっき雷が光った。

朝食をみんなで待っている。7:00を5分以上過ぎているのにまだ朝食が出てこない。いつの間にか雨がやんでいる。私が何気なしに、男声合唱曲の「雨」を小さな声で歌っていると、Tさんが横に寄ってきてじっと聞いている。「いい曲だね」「うん、名曲だよ」日本の男声合唱曲は、混声や女声よりもはるかに少ないが、名曲は男声合唱曲に多い、と思うのは私だけだろうか。

朝食後はいつも散歩に行くのだが、なんか今日はみんなあまり元気がなく、眠いだのだるいだの言っている。雨はあがっているが、濡れていてベンチにも座れないだろう。私も少し眠くなってきた。今朝も夜明け前からいろいろ気を遣ったからだろうか。今日の散歩はみんなお休みにした。

火曜日の午前は作業療法。また作業棟へエアロバイクを漕ぎに行く。今日は昨日よりも体調がいい。20分2セットやった結果、消費カロリーは1セット目は120.1kcal、2セット目は108.7kcal。うん、昨日よりあがっている。昨日よりマシンの負荷も上がっている。やはり心拍数は150を超えないと気が済まない。でも、無理は禁物だ。それが自分を今の病気に陥れた原因の一つだから。つらいときに歯を食いしばって「頑張り抜く」ことが好きだった。でも、今は「頑張り」「抜く」ことを覚えなければ。そう思っている。「練習はさぼる勇気が必要だ」カエルパンチで有名な元プロボクサー輪島功一の言葉である。ところで、いつもぶらぶらしてるだけのS君が珍しくエアロバイクを漕いでいる。実習生の前だから格好つけているのだろうか。

セット間のインターバルで、ピアノが空いていたので弾いてみた。「エリーゼのために」がぜんぜん弾けない。昔は簡単に弾けたのに。あれ、前も書いたかな?ピアノは幼稚園の頃から中学一年まで習っていたが、親に強制的に習わされていたため、練習嫌いだった。もっと練習しておけばよかった。もっと続けておけばよかった。でも、いまさらそんなことを言ってもしかたがない。あの頃ピアノを習っていたおかげで、今の音楽活動に必要な基礎的な能力が養えたのだ。オカリナを始めたのは去年の11月だが、練習したのは指づかいだけだ。メロディーを覚えてさえいれば楽譜なんか見ずにすらすら(いかないこともあるが)吹けるのも、吹いていて「これはキーが高くて高い音が足りないな」と思ったら、適当にキーを下げて吹いたり途中でオクターブ下げたり、ということが労せずできるのも、その頃のレッスンのおかげだろう。だが、中途半端な絶対音感(とはとても言えないが)があるため「楽譜を見て」オカリナを吹くのは苦手である。私のオカリナはG調なので、楽譜上の「C」を吹いて「G」の音が出るのにものすごく違和感を感じて、頭が混乱するのだ。

昼食後、また眠くなってきた。まあ、午前中に運動して飯食えば、腹もへるわな。ではない、眠くもなるわな。横になってアイマスクをかけ、CDをかける。アイマスクも私の超お気に入りグッズの仲間入りして、「んもうこのまま誰かさらって行って!」てな感じだ。今回のBGMはキングズシンガーズの「Good Vivration」。Zzz…

おはようございます。案の定寝てしまった。たった今目が覚めた。1時間ちょい寝ていたようだ。目覚ましに濃いコーヒーをいれて飲む。

15:00になった。シャワーを浴びさせてもらいに、洗面器を持って浴室へ行く。浴室はホールの奥にあり、ホールを横切っていると、「なんでお風呂入るの?」とあるおばさんが聞いてきた。「僕アトピーなんで、毎日お風呂に入らないといけないんですよ。それで、特別に許可もらってるんです」そう言うと、彼女は言った。「いいな~、私もアトピーになりたい」それを聞いてむっとした私の顔を見て、彼女は「やあねぇ、冗談よ~」と笑って行ってしまった。

言っていい冗談と悪い冗談がある。みんなだって本当は毎日お風呂に入りたい、せめてシャワーくらい浴びたいと思っているのはわかっている。だから、私もアトピーの治療のためとはいえ、特別に一人だけ毎日入浴を許可されていることに対して、みんなにはすまないな、と思っている。だが、うらやましいからと言って、アトピー患者の前で「私もアトピーになりたい」なんて言うか?アトピーの辛さなんかこれっぽっちも知らないくせに。なりたかったらなってみろ。アトピーで苦しむのと、アトピー患者でない人が毎日風呂に入れないのと、どっちが辛いかよ~くわかることだろう。彼女の言った言葉は、うつ病患者に対して「いいよな~堂々と会社休めて。俺もうつ病になりたいよ」と言ってるのと同じことだ。

な~んちって、実は本当はそんなに腹が立っているわけでも、落ち込んでいるわけでもない。相手の気持ちを無視したこういう差別的な発言には、幸いなこと(?)にもう慣れっこだ。精神的に不安定なときだったら、この一言で鬱に落ちていたかもしれないが、今は安定しているので、ちょいとむっとしただけで聞き流すことができた。

連絡会が終わり、喫煙所にみんな集まっておしゃべり。いつも通りのバカ話に花が咲く。なんか最近みんなこの時間におやつを持ってくるようになって、今日もいろんなお菓子がテーブルに並ぶ。私は間食はあまりしないのだが、目の前に広げられるとついつい食べてしまう。今日は私の好きな羽二重餅があった。私は洋菓子より和菓子の方が好きなのだ。うん、これでご飯三杯はいける。

昨日入ってきたおじさん、また30分前から薬を待って立ってる。なんでそんな早くから並ぶんだ?だけど立ってる位置が少し後ろの方なので、薬の時間近くになると、みんな次から次へとその人の「前に」並んでいる。おじさん、無表情でじっとコップを持っている。うん、よくわからん。

20:00になった。私はちゃんと後ろに並んで薬を受け取る。これから就寝準備モードに入ろう。