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鬱るんです
躁鬱病のITエンジニア「はまー」が心と体の模様を記した雑記帳。 大手IT企業で心身ともにぼろぼろになり退職した後、ほそぼそと働いたり事業を立ち上げようとして頓挫したり、作業所に通ったり障害者雇用で働いたりと紆余曲折したが、今は無職な毎日。

日別アーカイブ:2001年8月27日

睡眠障害がひどくなってきている。寝付きはいいのだが、中途覚醒がまたひどくなってきて、たびたび目が覚める。1:00頃だったろうか、追加眠剤をもらって飲んだが、やはり寝たり起きたりの繰り返しで、結局3:00過ぎに起きてきてホールでたばこを一服。もう一度寝ようと病室に戻るが、やはり眠れず、4:00頃起きてきた。さっきは人が2人くらいしかいなかったが、今はたくさん集まっている。またひそひそ話。昨日看護婦に注意されたけど、かまうもんか。昨日結局戻ってきたMちゃんやS君がいる。Mちゃんは16歳のときに、とても仲のよかった弟を交通事故で亡くしたらしい。それがトラウマになっているのかと思ったら、「それもあるかもしれないけど、それだけじゃないの」と言う。いろいろ抱えているらしい。「死んだら弟に会えると思うの。だから死ぬのは怖くないの。これってアブナイよね」Mちゃんは言う。確かにあぶないと思う。「でも、死んじゃったら、今生きている人に会えなくなっちゃうよ」私が言うがMちゃんは何も答えない。S君は死んだMちゃんの弟に似てるらしく、かわいがられている。「弟はもっとハンサムだったけどネ」Mちゃんは寂しく笑う。自殺で死ぬ人は交通事故で死ぬ人の2倍いる。発作的な物もあるが、彼女のように希死念慮が繰り返し襲ってくる人は、いつか本当に成功して死んでしまうのだろうか。精神科病棟で一番病院が気をつけていること、それが「自殺をさせない」ことである。プライバシーもへったくれもない病室もそのためだ。

会話の中で、前にも出たが「左利き」の話が出た。なぜ左利きは「ぎっちょ」と言われるのか。私はそれをいわれると非常にむかつく。なんだか差別的なニュアンスを感じるからである。日本では「左」は「右」に対して劣っているというか、差別されているような風潮があり、言葉にも現れている。「左遷」というのもその一つだ。少し頭の足りない人を「左巻き」と言ったりもする。左利きの子供に無理矢理右手で字を書かせて矯正させるようとする大馬鹿者もいまだにいるのだろうか。昔からの日本の「型にはめる」教育のせいなのか。個性を尊重する欧米がうらやましい。ま、日本も少しずつ変わりつつあると思うけど。私が一時期通っていた整体の先生は言った。「『うつ』も個性のうち。それを容認できない日本社会が悪い」

朝食後の散歩。またグランドへ行ってオカリナを吹く。今日は曇りなので涼しい。何となく「スカボロフェアー」な気分だったので、「スカボロフェアー」から吹き始める。スカボロフェアーはサイモン&ガーファンクルのアレンジで有名だが、元はイギリス民謡である。6月のコンサートで、うちのヴォーカルアンサンブルグループはスコラーズ編曲の4声のスカボロフェアーを演奏したが、いまいちだった。アレンジがポリフォニックなのだが、ルネッサンス期のポリフォニーを含め、そういう音楽をうちのグループはあまり手がけたことがなかったから、慣れてなかったのだ。ああいう音楽はごまかしがきかなくて、本当に難しい。特に1パート1人のヴォーカルアンサンブルでは、各自の音楽性がもろに影響する。ベースが鳴ってリードが決めて、後は適当に和音ハモってればいいや、の世界ではないのだ。音楽の全体の流れの中で、自分がどのようにフレーズを形作っていけばいいのか、歌っていてずいぶん悩んだ。

オカリナを吹いてると、グランドの向こうの方にMちゃんが見える。隠し持っている携帯で友達と電話しているようだ。私は携帯自体は「友達とのおしゃべり」に使うことはない。使うのは、「緊急の連絡(練習に遅れます、とか)」や、山に登ったときに、下山時に下山報告を山行管理局に入れるくらいだ。あ、でもi-modeはよく使う。「駅探」は手放せない。「天気Plus」も重宝している。去年の9月、火打山から妙高山を縦走(というよりあれはピークハント2回だったぞ)したとき、妙高山の山頂から「天気Plus」の「ピンポイント天気予報」で、「妙高村付近」の3時間おきの降水確率を見れたときは嬉しかった。最近では山でも、山頂や稜線上ではけっこう携帯の電波が入るので、緊急時の連絡などにも便利だ。でもやはり山では無線をもっておきたい。という私はまだ免許を持ってない。携帯も、山ノボラーはDoCoMoでないと苦労する。街中では他社と大差ないが、ちょっとへんぴなところへ行くと、とたんにDoCoMo以外は圏外になる。

寝不足なので調子が悪いかも、と思ったがそうでもないので、作業棟へエアロバイクを漕ぎにいく。今回はちゃんと正常なマシンで安静時からの体力テストを行うと、体力レベルは「6段階中の3、標準です」と出た。ああよかった。先週のは、やはりちょっとおかしかった。その後少し休んでから、体力テストの結果で出た自分に適した負荷値を設定して20分間漕ぐ。消費カロリー103.8kcal。ま、こんなものか。

病棟に戻って、先週作ったカルテを作り直す。体力テスト用のシートと、一般トレーニング用のシートをわけた。体力テストは週一回、一般トレーニングは毎回やることにした。

ところで、カルテを作ったと言っても、それを記録するのにこのハンドヘルドPCを作業棟に持っていくのは抵抗があったので、手帳とシャーペンを持っていった。漕いでる間に盗まれたりするとイヤだからである。手帳に結果を記録し、病室に戻ってPocket Excelのカルテに記入することにした。ところが今日、体重や体脂肪を計ってメモ帳に記入し、そのままメモ帳とシャーペンをトレーニングルームの入り口に置いたまま、すぐ隣でくつろいでいるO嬢がいたので、数分間話をしたりマッサージしてあげたりした。その後、戻ると手帳はあるがシャーペンはない。あれ、どっか落っことしたかな、と思ってあちこち探したが見あたらない。ふと見ると、さっきいなかったMちゃんがピアノを弾いている。彼女はリストカットをするのでシャーペンを含め、いろんなものを取り上げられている。「シャーペンが一番やりやすいんだ」そう言っていた。そして昨日彼女は外泊予定だったのが、精神状態が不安定で、またやってしまいそうだからと結局帰ってきた。もしや、もしや、彼女が無意識にでも取っていったとしたら…。それは非常にまずい。私が不用意に置いたシャーペンで彼女がまたリスカをやるようなことがあってはならない。とは言え、彼女に聞くわけにもいかない。そばにいた看護士に事情を話すと「わかりました。ちょっと気をつけて見ておきましょう」と言われた。

さんざん探し回ったあげく、作業療法士が見学の人に説明する場所に置いてあった。作業療法士に聞いてみると、「あ~、ごめん。そこにあったから勝手に使っちゃった」よかった。彼女が取ったのではなかったのだ。ほっと胸をなでおろす。

明日は山岳会の集会が夜にあるので、外泊届けを書いて出す。外泊時には、家に着いたら病院に連絡を入れないといけない。だが、集会は21:00までで、病院の電話取り次ぎも21:00までだ。どうやっても21:00までに家に帰って連絡することはできない。そう看護婦に伝えたら、「じゃあ外からでもいいので21:00までに連絡ください」そう言った。ところが、後から病室へ来て「22:00でも23:00でも取り次いでもらうようにお願いしたから」と言う。私のためにわざわざ病院の受付の人に頼んだのかな、と思って「普通は21:00までなんですよね」と言うと、「22:00でも23:00でも取り次いでもらうようにお願いしたんです!」と怒鳴るように言う。なんなんだ。なんでそんな怒るんだ。わけがわからんぞこの看護婦は。ちょっとむかついた。睡眠障害がまた悪化した件で主治医と今日面談する予定になっているので、ついでに「あの看護婦はなんですぐ怒るんですか?」と聞いてみよう。

昼食後、会社の上司に電話した。「まだまだかかりそうです」ということを伝える。ほんと、いつまでかかるんだろう。

なんだかだんだん疲れてきた。やはり寝不足だからだろうか。30分自転車漕いだだけで、普段ならこんなに疲れるはずはないのに。しかも直後でなく、しばらく経ってから疲れが出てきた。今日の午後の予定は入浴だけだ。ゆっくり休もう。「ろしあじんはいった~、つかれた~ら~や~す~め~」男声合唱曲「ゆうやけの歌」の歌詞である。ああ、久しぶりに男声合唱がやりたくなってきた。男声合唱には、混声合唱とまた違った独特の「ハモリ」の世界がある。私は以前、少人数だがとてもいいメンツが揃っている男声合唱団に入っていて、北欧系の曲をよくやった。指揮者の先生がとても指導者として優れていて、練習がとても楽しかった。あの頃が懐かしい。私はその合唱団はやめてしまったが、その後人数がさらに減り、先生もやめてしまったという。今でも活動しているのだろうか。廊下ではまた例のヘッドギア爺さんが慶応の学歌を歌っている。

今日の入浴は一番最後だ。それまでゆっくり体を休めよう。普段ならベッドで横になっているが、今日は風呂の順番を待ちながら、ホールの畳で寝そべる。すぐ横にレーザーカラオケがあってCDも再生できるので、トライトーンの「One Fine Sunday」を小さな音量でかけながらうとうとする。

なんだかえらく派手なおばさんが入院してきた。派手なアロハシャツにアクセじゃらじゃら、おばさんサングラス。とても場違いな感じがする。「そういう格好してる時点で病気じゃないのか?」そう言いたくなる。卓球をやってるのを見て、「私、ちょっとやったことあるのよ」と言うが、彼女がやっているところを見ると、とてもめちゃくちゃなフォームで、あれではピンポンの域を出ない。なんせ、落ちてきたボールを、バレーボールのボールを拾うようなフォームで腕を伸ばして下からボールを鬱のだ。いや、打つのだ。だめだ、ATOKが「うつ」の漢字を学習してしまっている。その後、S君に勝負を挑んで二人で真剣勝負をしていると、目を丸くして見ていた。私がスマッシュを打ったのを見て「今の、入ったの?」と聞いてくる。横に座ってて見えないのか?

主治医が来たので面談する。ここ数日、睡眠障害がまた悪化していることを伝え、日中も少し調子が悪いことを伝えるが、まあ予想通り、波がありますから、ということでもう少し様子を見ることにした。どんどん悪くなるようだったら、また相談してください。とのことだ。ただ、明日用事があって外泊するんですよ、と言うと、じゃあまた外泊から戻ってから様子を聞かせてください、と言われた。昼間の看護婦のことに対して、愚痴っぽくなってしまったけど話したら「まあ、社会に出ればいろんな人がいるから、その訓練とでも思ってください。あんまり気にしないように」と言う。まあ、それはそうだ。看護婦もたまたま機嫌が悪かっただけかもしれない。「この人は今機嫌が悪いだけなんだろう」「この人はこういう人なんだ」そう思うようにして、いちいち相手にするのはやめよう。

夕食前にHさんにマッサージしてもらった。前は椅子に座ってだったが、今回はベッドにうつ伏せになって、本格的に30分近くやってもらった。めちゃくちゃうまい。思わずひーひー歓喜の声を出してしまった。彼はあれで食っていけるのではないだろうか。

さっきの派手なおばさん、喫煙所の長椅子にだら~っと寝そべって、かなり横柄な感じだ。おいおい、それじゃ他の人が座れんだろ。と思いつつ、S君と卓球していたら、いつの間にか喫煙所が騒がしい。なんだなんだと思って見に行くと、寝そべってたおばさんがいきなり長椅子からずり落ちて動かなくなったらしい。看護婦が来て血圧を計ったが異常なし。車椅子に乗せられて病室へ運ばれていった。初日から人騒がせなおばさんだが、いったいどんな病気なんだろう。

夜は中年のおじさんMさんと軽く卓球をした。このMさん、卓球は素人とは言いつつ、相手していて一番おもしろい。ちょこん、ちょこん、と短い球をするどい角度で決めてくると思えば、打つときはバシッと打ってくる。おもしろいのは、ボールがバックに来たときに、目にも止まらぬ早業でラケットを左手に持ち替えて打ってくる。ラケットの柄の方でなく、頭の方を持って打ってくるのだ。思わずこちらは笑けて力が入らなくなる。もちろん反則である。

さっきのおばさんが復活して喫煙所にいる。なんか次から次へとお菓子やらソーセージやら配りまくってる。夕飯を食べたばかりだったのでほしくなかったが「いりません」と言うのもためらわれて、もらって食べる。

20:00になった。眠剤を飲んで就寝準備だ。今日は前の晩眠れなかったにしては調子が割とよかった。このまま回復傾向に向かって、今晩はよく眠れるといいな。